郡上八幡の家

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・経緯
名古屋に居を構えていた施主ご夫妻が「これからのすごし方(すまいかた)」を考え直したことを機に、他地域への移住を決意。 『まち・人の雰囲気や、時間の流れ、豊かな自然に魅力を感じたから。』と、直感で郡上八幡というエリアに絞り、 住居探しをスタートされました。滑稽でいて、少し危険さをも感じさせる本物件との出会いが決定打になったとのこと。 建物の一番古い記録は1961年で、どうやら長い年月をかけて親族間で住み替えられ、その時々の住まい方に合わせて工夫を重ねた複雑で面白いつくりとなっていました。一方で、現状のまま住み継ぐことは、様々な側面での耐力が脆弱で、難しくもありました。

・設計にあたり
次世代へと住み継ぐために、既存家屋が持ち合わせる滑稽な構成に呼応し、その中で新たな暮らしの豊かさが生まれ・増幅するような、のびやかな耐力を持ち合わせる設計とはなんだろう..そう言ったことをぼんやり考えていた気がします。

方針は「既存*をモチーフとして骨格は残しながら、改修では新たな「施主像」と重ね合わせ、室の読み替えを行う」
読み替えに際し、採光/換気/構造/断熱といった基本的な環境改善は担保し、その上で平面的・断面的に室を部分的に開放。 結果として暮らしの「風通し」が良く、様々な視点が交錯する空間を立ち上げることに成功しました。

[*既存:従前の居住者の軌跡、暮らしの動線や室用途、全てを既存と捉える]

・解体しながら作る、作りながら考え向き合う
今回のプロジェクトは施主・設計者・施工者、 三者の連携なくして、この全体の「面白さ」を生みだすことはなかったように思います。 施工が進む中で時に三者が設計提案。判断と工夫を積み、重ねた現場であり、特定の「誰か」の設計と定めない三様の現場への向き合い方には、「設計」者に有り得るに役割やふるまいを考え、気付きを得る機会となりました。施主の臨機応変な提案と施工者の尽力に深謝の限りです。

高度経済成長期から存在している本建物が、「これから」をすごす新しい住まい手の頼もしい決断によって、今新たな’成長’を遂げていることが面白い…そして、郡上八幡という地域が今もなお「まちと人の営みが循環する魅力」を生み続けているのは、 そういった小さな集積を受け入れる寛容さ所以なのかもしれない…と振り返ることができる改修プロジェクトです。郡上八幡を訪れた際は、ぜひ、まちを歩きその景色を体感していただきたいです。

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